「産休・育休は男女とも取得できる」? その表現、誤解を招いていませんか?
「当社では産休・育休が男女とも取得できます」といった表現が、求人広告や企業の広報資料で多く見られるようになりました。一見するとワークライフバランスへの理解がある良い企業のように思えますが、実はこの表現には法制度上の誤りが含まれている可能性があります。
まず確認したいのは、「産休」と「育休」は異なる制度であり、適用対象者に明確な違いがあるということです。
■ 産休(産前産後休業)は女性のみ
産前産後休業は、労働基準法第65条に基づき、出産する女性労働者に認められている制度です。産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間の休業期間が保障され、これは生物学的に出産する女性だけが取得できる休暇です。男性がこの「産休」を取得することは法制度上設けられていません。
■ 育休(育児休業)は男女とも取得可能
一方、育児・介護休業法に基づく「育児休業」は、男女問わず、原則1歳までの子を養育する労働者が取得可能です。2022年の法改正により、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる「出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)」制度も創設され、男性の育児参加をより推進する制度設計となっています。推測ですが「当社では産休・育休が男女とも取得できます」と表現しているのは「出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)」のことを指しているのかもしれません。若しくはその企業では女性の産前産後休業と同様の制度を男性にも認めている可能性もあります。いずれにしてもどのような制度を設けているか正確に表現することは必要でしょう。
■ 求人・広報における適正表現のすすめ
法制度を踏まえずに「産休・育休が男女とも取得可能」と記載することは、誤認を与え、虚偽記載と判断されるおそれもあります。そのため、企業広報や求人票では次のような表現が望まれます。
- 「育休は男女問わず取得可能です」
- 「男性の育休取得も推進しています」
- 「女性の産前産後休業、男性の育児休業いずれも取得実績あり」
また、取得実績(取得率や平均日数)などを併記することで、求職者の安心感や企業の信頼性も向上します。
労働法に基づく制度を正しく理解し、社内外に誤解のない表現を行うことは、採用活動の信頼性を高め、ひいては法令遵守と企業イメージの向上にもつながります。
育児休業は男性にとっても当たり前の制度へと移行しつつあります。正しい制度理解と適切な情報発信で、誰もが安心して働ける職場づくりを進めていきましょう。

