労働時間管理と健康配慮: 固定残業代の適切な運用方法


初任給を大幅にアップさせるが、中身は基本給アップではなく固定残業代を増やしていた、という事例を耳にするようになりました。

固定残業代を導入すると、給与計算時の残業代計算が簡素化されて給与担当者の業務負担が軽減され、残業しなくても一定の給与額が受けられるなどのメリットがありますが、デメリットもあります。

デメリットとして、残業しなくても固定残業代を支給することになるため労働時間以上に人件費がかさむ、最初から残業代を支給するので残業が当たり前という状況になりやすいことなどが挙げられます。

また、固定残業代以上の残業代は支給しなくてもよいと誤解されている管理者がいて、固定残業代で定めた残業時間を超えても残業代を支払わないケースも多く耳にします。実際には固定残業代で定めた残業時間を超えた場合、超えた時間分の残業代も支払わなければなりません。

固定残業代を導入している事業所でたまに見受けられるのですが、「総支給額に固定残業代〇〇時間分が含まれる」と設定しているケースがあります。

固定残業代を導入する場合、次の①~③の内容をすべて明示する必要があります。

①固定残業代を除いた基本給の額

②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法

③固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

②の金額等の計算方法は、固定残業代が正しく計算されている必要があります。

残業代を計算する際、基本給等に加え、原則として毎月支給される各手当も含めて計算しなければなりません。

残業代を計算する場合、原則として各手当も含めなければなりませんが、通勤手当、家族手当、住宅手当等は除外可能ですただし、距離や家族の人数等に関係なく一律に支払われる手当は残業代の計算に含めなければなりません。

月80時間分の固定残業代を支給する事業所も報道されています。

固定残業代80時間分を支給するから実際に月80時間残業させるとは限りませんが、36協定を届出て月45時間まで、特別条項付き36協定を届出て年6回まで、月に80時間まで残業させることは可能です。

仮に特別条項付き36協定を届け出た場合でも、月に80時間残業するのは年6回までなので、残り6回は上限45時間までですから、差引35時間分の残業代は残業しなくても受けられることになります。

月80時間の固定残業代を定めることは直ちに無効となるか判断は難しいのですが、月80時間分の固定残業代の定めは公序良俗に反し無効とされた判例があり、無効とした理由は厚生労働省より公表された労災認定基準、脳血管疾患及び虚血性心疾患等が発症する恐れがある時間外労働時間が月80時間程度であること、いわゆる過労死ラインが挙げられています。

現実的には毎月80時間の残業をさせることは法的に不可能であり、月80時間の残業が続くと体調不良、過労死の可能性が高まりますから、事業所としては労働時間の管理に加え、従業員の健康管理も充分に配慮しなければなりません。

固定残業代はルールに則り正しく運用することが求められます。併せて従業員の健康管理への配慮も必要です。

このように、固定残業代の導入にはメリットとデメリットがあります。適切な運用と従業員の健康管理が求められることは言うまでもありません。従業員の満足度向上と健康的な労働環境を作るために、正しい運用方法と健康管理の実施が重要です。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf

https://omorosr.com/

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